『イギリス型<豊かさ>の真実』を読んで日本の医療制度について考える

 

 

 

 

イギリスの社会保障について勉強しようと思い、『イギリス型<豊かさ>の真実』という本を読みました。

 

 

イギリスにはNHS(National Health Service)という国営医療制度があり、未成年は無料、大人も薬代だけ負担すればいいことになっています。

 

しかも驚いたことに、イギリス人だけでなく外国人も無料で医療が受けられる制度になっています。

 

さすが福祉先進国イギリス、素晴らしい高福祉社会だと思うかもしれませんが、実態はそう単純ではないようです。

 

 

イギリスでは確かに無料の医療を受けることができますが、日本のように手厚い看護や迅速な診察をしてもらえるわけではありません。

 

安かろう悪かろうと言ってはなんですが、ナースコールを押して痛みを訴えても痛み止めをもらえなかったり、診察はもちろん手術でさえ2週間待ちが当たり前だったり。

 

とても充実した医療とは言い難いのが実態です。

 

これは国立の病院の話ですので、民間の病院に行けばより良いサービスを受けることはできます。

 

ただ、風邪の診察でも3万円程度のお金がかかるなど、経済的負担はかなりのものです。

 

さらに言えば、民間の病院はサービスのレベルに関しては国立よりも優れていますが、受けられる医療技術のレベルは国立と同じなのです。

 

つまり、「高いお金を払える人はより早く医療にアクセスできてサービスの質も高い」という社会になっているのです。

 

こうした話を聞くと、日本の医療制度の方が充実しているように感じられます。

 

3割負担とはいえ、ちょっとした熱でもすぐに対応してもらえますし、入院中は看護師さんに手厚く看病してもらえます。

 

「医療費無料」という文言だけで他国の制度を礼賛するのではなく、実態について詳しく知ることはとても重要だと思いました。

日本の保険制度の問題点

とはいえ、日本の保険制度にも問題点はあります。

 

その一つが、保険診療と保険外診療を併用するいわゆる「混合診療」が認められていないことです。

 

厚生労働省や日本医師会は、混合診療は不当に患者の医療費負担を増大させる恐れがあり、お金の有無によって受けられる医療に差を生み出す恐れがあると指摘しています。

 

これは確かに一理ある説明ではあります。

 

悪徳な医師が、本来なら保険診療ができる治療を高値で患者に押し付ける可能性があるからです。

 

そういった点では、確かに規制は必要なようにも思えます。

 

しかし、お金の有無によって受けられる医療に差を生み出すかもしれないという点については、「もうすでにそうなってる」というのが現実でしょう。

 

お金がある人は保険適用外となっている最先端の医療を受けて、生存の可能性を少しでも上げることができますが、お金がない人はそれができません。

 

「お金の有無で治療の選択肢が変わることを防ぐ」というのは、混合診療を認めない理由にはならないと僕は思います。

 

むしろ、混合診療を認めないことはお金がない患者の負担を重くしている側面もあります。

 

現行の制度では、保険適用外の治療と保険適用の治療を併用した場合、保険適用の治療までもが全額自己負担になるからです。

 

「命と治療の平等性」を理由に混合治療を認めないことで、むしろ貧しい患者ほど治療のハードルが上がるという本末転倒なことになっているのです。

 

このことについて、『イギリス型<豊かさ>の真実』の著者である林さんは、

 

「混合診療を医師会が認めない本当の理由は競争を避けたいから」であると指摘します。

 

実は、混合診療は歯科医療ではすでに認められており、結果として歯科医療の世界では厳しい競争が生まれているのです。

 

最先端の技術を導入する歯科医院にはより多くの患者が集まって利益が増える一方、技術をアップデートできない歯科医院には患者が集まらないからです。

 

日本医師会は、もし混合診療が広く認められるようになれば歯科以外の医療界においても競争が生まれ、経営が傾く病院が出ることを心配しているのではないかと林さんは指摘しているのです。

 

そして、厚生労働省にも混合診療を認めたくない理由があります。

 

先ほども述べたように、現行の制度で保険診療と保険外診療を併用する場合、保険診療の部分も含めて全額を患者が自己負担するというルールになっています。

 

つまり、混合診療が認められるようになれば、これまで保険で支払っていなかった治療についても保険で支払うことになるため、確実に医療費が増大するのです。

 

 

もちろん、混合診療には不当に患者が高負担を強いられるというリスクがあるのは事実です。

 

しかし、混合診療を認めないことによるデメリットが大きいのも事実であり、厚労省や日本医師会には混合診療を認めたくない「裏の理由」が見え隠れしています。

 

果たして日本は混合診療を広めるべきか否か。

 

皆さんはどう考えるでしょうか?

若年層はひたすら高負担?

厚生労働省によると、65歳以上の高齢者の人口は2042年にピーク(3,878万人の予測)を迎えます。

 

また、75歳以上の高齢者が全人口に占める割合は、2055年には25%を超える見込みとのこと。

 

言い方を変えれば、現在(2021年)から20年以上先まで高齢者は増え続けるということです。

 

仮に今から急にベビーブームが起きたとしても、その世代が社会人として税負担をするまでに日本の高齢化はピークを迎えてしまうのです。

 

つまり、「増え続ける高齢者と減り続ける若者」という構造は、20年先まで続くことがすでに確定しているのです。

 

そうなると、現行の医療保険制度を20年先まで維持することは不可能でしょう。

 

保険料の値上げや、窓口での負担を増やしていくことは避けられません。

 

現役世代は減り続けるわけですから、彼らだけの負担では高齢者を支えることはできず、ゆとりのある高齢者にも負担を増やしてもらうことになるでしょう。

 

ということは、今の若者は現役の時は高額な保険料を天引きされ、高齢者になって引退したころには自身の窓口負担が重くなっている可能性が高いということです。

 

今の若年層にとって、「医療費はひたすら高負担」という人生は避けられないものなのかもしれませんね。