佐藤優と灘高生の対談シリーズ

 

 

 

 

紹介

『君たちが知っておくべきこと―未来のエリートとの対話―』

 

その対話は、知識欲あふれる高校生たちからの突然の申し入れによって始まった。知的エリート社会の国際ルール、反知性主義への対処法、外国語習得術、海外進学のメリット・デメリット、異性問題の意外な解決策から一般大衆との距離感覚まで。若きエリートたちの直面する切実な問題に、熱く、親身に応えた圧巻の講義、全3回を完全収録!

 

『君たちが忘れてはいけないこと―未来のエリートとの対話―』

 

世界の行方も日本の未来も、決めるのは僕たちだ! 世界的に広がる格差をなくすには? 資本主義の終焉はいつ訪れる? 後悔しない大学の選び方は? 社会のリーダーに必要な教養とは? 切実でイキのいい問いを遠慮会釈なくぶつける高校生たちに、自らの知識と経験を惜しみなく語り伝える名講義完全採録。

振り返り

日本トップクラスの名門校である灘高の生徒たちと、知の巨人・佐藤優の対談本。

 

今の世界で起きていることを正確に把握し、これからの世界で起きることを予想するためには、文理を問わず幅広い教養を持つことが必要だ。

 

しかし、名門大学に進学した学生でさえ、効率よく受験を乗り越えるために特定の科目を捨てた人は少なくない。

 

その結果、早慶レベルの大学でも中学レベルの数学でつまずいていたり、日本への原爆投下が80年代のことだと答えたりする学生がいるのが現状だ。

 

佐藤氏は、自身が推薦状を書いてモスクワ大学に送り込んだ名門大学出身の外務官僚が全員落第したエピソードを挙げ、日本の大学生に欠如している3つの教養を指摘している。

日本の学生に欠けた3つの教養

数学

偏微分が出来ないと、今の経済の本を読んでも理解することができない。

 

高校で数Ⅲまで学習し、経済数学の授業や法学部の数学の授業を取れば、大学レベルの数学について行くことができる。

 

そうすれば国際舞台で活躍する官僚として、あるいはビジネスマンとして経済の論文を読むことができる。

論理学

論理には2種類ある。

 

1つは非言語的な論理で、これは数学Ⅱの範囲に含まれる。

 

これが得意になると現代文ができるようになる。

 

2つ目が言語的論理。

 

文化的な背景が異なる人たちと国際舞台で渡り合う際に、共通の言葉になるのが論理である。

哲学史

高校の倫理の教科書のレベルは大学院と一緒。

 

そのため、高校の倫理を勉強しておけば国際水準の哲学の知識が身につく。

 

哲学が必要な理由は、思考の鋳型であるから。

 

 

 

受験勉強を馬鹿にしてはいけない

佐藤氏は、「受験勉強を馬鹿にしてはいけない」と生徒たちに語る。

 

灘高生といえば世代の上位0.5%以内に入る偏差値をたたき出し、ほとんどの生徒が東大・京大や医学部に進学する秀才の集まりだ。

 

そんな彼らに対してさえ、受験勉強の大切さを語っている。

 

高校の倫理が大学院や国際的な教養と同じレベルであり、数Ⅲを高校時代に学ぶことが大学以降の経済学に必須であるなど、高校時代に学ぶことはとても重要だからだ。

 

数Ⅲも理科系科目も、受験に使わないからと捨ててしまった文系大卒の僕としては耳が痛いが、これは多くの大人もそうだろう。

 

 

一方で、高校で学ぶすべての科目に向き合っていてはキャパオーバーになるという人は、受験科目を絞ってでも名門大学の合格をまずは勝ち取るべきだと僕は思う。

 

学歴は基本的に高校時代の3年間でしか手に入らないものだし、中堅以下の大学から名門大学院に進学する、いわゆる「学歴ロンダリング」への世間の目は暖かくない。

 

日本社会では、「教養」があることよりも「(入)学歴」があることが社会で有利になるのは間違いない事実だ。

 

これは就職にも結婚にも影響することだ。

 

そこの認識を間違えると、「大東亜以下」という件名のメールに「差別だ」と大騒ぎすることになる。

 

www.bokurano-jishu.com

 

ちなみに学歴フィルターが日本社会に浸透した経緯は、『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』という本で詳しく解説されている。

 

日本で大学が作られた理由は、「学術研究によってイノベーションや社会の進歩を生み出すため」というより、「身元の保証」としての役割が強かったのだ。

 

 

大学2年生までに高校レベルの欠損を埋めることが望ましいと佐藤氏は述べているが、それ以上の学年や社会人であったらどうするべきか?

 

それでもなお、高校までの知識の欠損は早めに埋めた方がいいだろう。

 

高校時代に勉強から逃げてしまった過去を嘆いてもどうしようもない。

 

僕自身も、今からでも高校レベルの参考書を読んで、欠損した知識や数学力を補っていこうと思う。

 

 

ちなみに、佐藤氏と灘高生との対談のなかで頻繁に登場した参考書が「詳説世界史B」であった。

 

「一度読んだら忘れない〇〇」みたいなタイトルの、薄めたカルピスのような本を読んでなにかを分かった気になるのではなく、しっかりした参考書を1冊マスターするのが王道ということだろう。